ごあいさつ

平成30年7月28日開催第125回通常組合会理事長挨拶

理事長  大野 忠

 今年の夏は全国的に暑く、特に西日本や東京では41度を超えるような大変な猛暑の連続に襲われていますが、さらに想像を超えるような甚大な被害をもたらしました水害、また九州の強い地震等々、地球温暖化のせいでしょうか、今年は自然災害が連続しております。各地の被災された皆様には心からお見舞いを申し上げます。またそのような厳しい天候とご多用の中をご出席いただきましてありがとうございます。厚くお礼申し上げます。
 本日の組合会は29年度決算を審議していただき、その後に新執行部を選任していただくのが主な目的です。
 さて、この4月に医療と介護の一体改革が行われ、過去3年、医療費の伸びが年間5,000億円に抑えられていた社会保障と税の一体改革がほぼ一段落し、次の超高齢少子の多死社会を目前にして、更なる改革の大きな方針を、2040年頃を目途に策定していこうという流れに現在なっているそうですが、日本の社会保障、医療保険の前途は極めて厳しいものがあります。
 日本医師会の横倉義武会長は、財政制度等審議会の「新たな財政健全化計画等に関する建議」(5月23日)で出されている、
(1)給付率を自動的に調整する仕組みの導入
(2)医療費の適正化に向けた地域別の診療報酬の設定
(3)受診時定額負担の導入等
―については反対であり、独自に財政再建に向けての提言を行っています。即ち
①健康寿命の延伸
②薬剤の適正処方に関するガイドラインの作成
③保険料の上限撤廃
④被用者保険の保険料率を協会けんぽ(10%)に合わせて引き上げ
⑤国民負担率の引き上げ
⑥企業の内部留保の給与への一部還元
―などです。
 つまり日医は「生涯にわたる健康づくりの推進により、住民の健康寿命の延伸をはかり、医療費の適正化を図っていく必要がある。医療費削減ありきではなく、健康増進を目的とした政策の結果として医療費・介護費が抑制され、税収増による社会保障財源の確保等も期待できる。また一億総活躍社会を実現することも重要であり、その結果、社会保障が充実し、経済成長につながる。そのような取り組みを地域において進めていくことが重要である」という立場です。
 考えるべき課題は数多くあるのですが、現在、当医師国保が直面しているのはもう少し、切羽詰まった問題、即ち高額医療費の発生とその対策としての保険料や組織の在り方、将来像の問題ではないかと考えます。本日はそれを中心としてお話しさせていただきたいと思います。
 さて、何度かお話しているかと思いますが、超高額医療費が問題になったのは平成26年1月に1枚で2,400万円(人工心臓埋め込み)というレセプトが出たことです。これを含めて月100万円以上の高額医療費レセプトが平成26年度は1年間の合計で36枚、約1億1,160万円になりました。また平成27年度は合計35枚で7,782万円でしたが、その内、ある血液疾患の患者さん1人で年間4,470万円を使用しておりました。当組合の総保険給付費(レセプト総枚数:平成26年度は22,538枚、平成28年度は22,392枚)が年間3億3,000万円程度のうち、その約3分の1の1億円前後が100万円以上の高額レセプト(枚数にして35枚(0.16%)、人数では14人)です。ただし100万円以上の高額レセプトとはいえ、通常は1枚110万円から500万円程度で、平均して約170万円です。
 しかし、その内たった2~3人のレセプトが年間1,000万円以上、合計5,000~8,000万円という超高額でありますと大きな影響を受けるわけです。つまり予算では間に合わず、積立金取り崩しか、緊急の保険料値上げをしないと対応できないと言う事になります。
 実際、27年度は4,500万円、28年度には7,300万円の赤字が予想され、この突然発生した予期せぬ大きな金額を如何にして調達するか、またこれがいつまで続くのか、さらにこの年度は悪いことに32%の国庫補助金が5年かけて13%まで削減されるという補助金削減問題とも重なり、ダブルパンチの深刻な事態になりました。銀行借り入れ、法定積立金の使用、臨時保険料徴収などいろいろ対策を検討しましたが、結局、年度途中の保険料値上げ、即ち平成27年度10月から所得割1.43%を2倍近い2.57%に、さらに平等割を第1種組合員年額12,000円、第2種組合員年額18,000円上げることで対応し、急場をしのいだのですが、医療の進歩、医療の環境が大きく変わってきていることを実感させられたのでした。
 しかし平成29年度は特に難しい問題がなく、上記超高額レセプトの2人の被保険者の方々も29年6月までに当組合を離れられたこと、27年度の値上げ、さらに30年4月に保険料賦課限度額を所得3,000万円から5,000万円までに改定したこと等から、29年度は単年度黒字が8,400万円、30年度への繰り越しが2億1,900万円可能となりました。これを踏まえ30年度予算を補正し、予備費を2億8,000万円程度まで引上げたいと考えておりまして、これは本日ご審議いただきたいと思います。しかしながら、これらの結果を得るために高年収の方々はかなりの負担増となっております。
 この超高額医療費問題については、全医連も今必死になって取り組んでおります。本年3月の宮城全医連会長から全医連国保問題検討委員会への諮問内容は3月の組合会でも申し上げましたように
①医師国保組合の将来について――組織再編も見据えて――
②高額レセプトへの対応について――再保険化もふくめて――
③特定保健指導の推進――第2期データヘルス計画策定と連動して――
の3つです。
 いずれも難しい問題で、各医師国保組合の構成や、積立金の有無、運営方法などがそれぞれ違っており、また社会環境も変わっており、次のような案が出てはいるのですが、現実にはいろいろ困難があります。
①国の32%から13%への補助金削減を中止させる、或は延期させる
②超高額医療を再保険化する
③大規模組織に切り替える。つまり少人数の組合では対応できないので、全国一本化、或はブロック毎の一本化など、大きな組織に切り替える。それによって組合員一人当たりの負担額を少なくする。
④従業員は協会けんぽ、或いは市町村国保などに移ってもらい、高齢者支援金の減額と高額レセプト数の減少を図るとともに、保険料改訂の自由度を大きくする、等です。
 しかし、いずれも医師国保の組織再編にも関わってくる可能性がありますので、まだ集約され今後の方針が決定されるまでには至っておりません。この後、中間答申がなされる予定になっておりますが、最終答申には時間がかかりそうです。しかし喫緊の課題でありますので、自分たちで出来ることをまず考えてみるべきだと思います。
 いろいろな意見の中で私が一つ注目しているのは医師国保を「医師とその家族のみの組合」としたという香川県等の意見です。
 現在、全医連の中で「医師とその家族だけで構成する」組合は青森県や香川県など5組合ありますが、5月にそのうちの愛媛、宮崎、香川の3組合が集まって組合運営維持の今後を考える意見交換会を開催したそうです。その時の意見では「医師とその家族だけ」の組合という形は
①前期高齢者納付金が少なくなる
②これまでは、従業員一人当たりの収入と支出の相関で見ると、保険料より支出が高く、医師組合員の支えにより成り立っていたが、従業員に協会けんぽに加入してもらう事により、医師組合員の負担の公平化に寄与している。
③また従業員にもメリットがあり、従業員の協会けんぽへの移行は、すんなり行われた。
――等でありました。示唆に富む貴重な経験だろうと思います。関連してそのほかにも現在、私たちが抱えている問題は幾つかあります。長くなりますので項目だけ申し上げますが、これらも同時並行して考えなければなりません。
①予期できない、突発する超高額医療レセプトへの対策―――積立金増額か、予備費による対応か、柔軟な保険料徴収方法の設定か、一時借入か等。
②組合員の減少―――秋田県医師国保の被保険者数は少しずつですが減少傾向です。全医連でも同様で年間おおよそ1.5%前後(平成28年度の被保険者数は310,772人。前年の27年度から4,355人)の減です。
③低収入者や家族の保険料の軽減―――当医師国保の子供や低収入の組合員の保険料は割高です。このままでいいのかどうか、家族の平等割の在り方もこれでいいのかどうか検討が必要です。
④特定健診や保健指導を含めて疾病予防対策の充実とペナルティ回避、その他。
 なお、参考までに昨年の東北・北海道の保険料状況をみますと全組合で値上げ改訂が行われていますが、医師とその家族のみを被保険者とする青森県が値上げ後であっても市町村国保より大幅に安いとのことです。
 全協でもこの高額医療費問題を無視しているわけではなく、制度研究検討委員会を立ち上げ、検討を進めています。例えば、現在の高額医療費共同事業を再保険方式、又は共済共同方式とし、1件・月当たり診療報酬請求額が1,000万円以上を対象に、交付された後の負担増を軽減、又は負担増につながらない算定制度とするなどです。説明いたしますと、今の共同事業は高額のレセプトが発生した時に、一時的に貸してくれ、各組合が負担するのですが、その後、数年かけて月賦方式で返していくものです。結局、負担が減るというものではありません。公費負担もありますが2割程度です。ただし新たな拠出金負担には反対が強く、傘下の各組合からは反対の意見が強いようです。今のところは実現困難でも、国に補助金増額を働きかけるべきとの考え方が強いようです。
 以上、現理事役員の任期は7月31日までであります。現在当組合が抱えている主要な問題点について申し上げ、次の理事会に解決への努力をお願いしたいと思います。冒頭申し上げました様に国では「次の一体改革の大きな方針」が検討されようとしている時期です。医師国保にとっても激変する新たな医療環境に備えて、今後5年、或は10年先を見据えての組織の在り方、保険料の在り方などが検討されていかなければならないのではないかと思います。
 皆さんすでにご承知と思いますが、この度、小玉県医師会長が日医常任理事となり、医師国保担当となりました。日医にも医師国保への大きな支援をお願いしなければなりませんが、私たち自身の努力も大事であり、慎重かつ大胆に変革を遂げながら秋田県医師国保組合を充実発展させていただくようにお願いしてご挨拶といたします。

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