ご挨拶

理事長 福島 幸隆
第138回通常組合会 理事長挨拶
令和7年3月8日
本日は春とは名ばかりの寒さの中、議員の皆様にはご多用のところご出席をいただきまして、誠にありがとうございました。
昨年は元日に能登半島地震が発生し、その上、9月21日には同じ地域で豪雨災害に見舞われました。また、8月以降、首都圏を中心にSNSの「闇バイト」による強盗事件が20件以上発生し、社会に大きな不安を与えました。一方、米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手がメジャー史上初の「50本塁打、50盗塁」を達成し、パリオリンピック大会では日本がメダル45個を獲得し、金メダル数では3位、総数では6位と喜ばしい出来事もありました。12月14日には北九州市小倉南区のファストフード店において、中学3年男女殺傷事件が発生し、今年に入ってからの1月22日にはJR長野駅前で男女3人殺傷事件が発生しました。一連の通り魔事件で、各地域の住民を大きな不安に陥れました。治安が良いと言われていた日本ですが、日常生活に潜むセキュリティの危うさを痛烈に思い知らされました。特に、北九州市の事件で亡くなった15歳の女子中学生に関しては夢を抱いて勉学に励んでいた最中に突然の凶行によって命を絶たれ、どれほど無念であったことか、またご両親の慟哭が聞こえるようで涙を禁じえませんでした。県内に目を転じますと、クマ被害が相次ぎました。昨年5月には鹿角署員2人が重傷を負い、11月30日秋田市土崎港のスーパーに、12月26日には秋田市仁井田の自動車整備工場に侵入したりして、市街地への出没が相次ぎ、地域住民に緊張が走りました。また、1月20日には米国第一主義を掲げるトランプ氏が第47代大統領に就任しました。78歳7か月での就任であること、米IT大手との結託が民主政治から少数の金持ちのための寡頭政治に変質させる可能性があること、関税を国家間の取引の手段としていることなど、民主主義国家に現れた独裁者のようで不安が尽きません。1月7日カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で発生した山林火災では多くの家屋が類焼し、29人の死者を出して、1月31日に鎮圧されました。2月26日には岩手県大船渡市で山林火災が発生し、今月5,6日の降雨によりやっと鎮火されつつあるようです。このように、今年も多事多難な年となりそうです。
さて、本日の組合会は令和7年度予算認定を中心にご審議をいただく予定となっております。議案書の13ページをご覧ください。昨年の第137回医師国保通常組合会で申し上げましたが、令和5年度の歳入歳出決算において単年度収支で1億1,381万5千円の黒字となり、決算残額は7億7,013万5千円を計上し、収支は引き続き安定しております。また、平成22年度から29年度まで超高額医療費レセプトが発生し、そのため保険料は平成23年度から平成29年度まで6回引き上げ、保有財産の確保に努めた結果、令和6年度の予算において、予備費への計上額と給付費等支払準備金の積立額を合わせて11億2,500万円の保有財産が確保されている状況です。令和4年度の決算では当組合の1人当たりの保有額は343,925円となり全国1位でした。しかし、医療保険料は令和4年度決算では1人当たり274,706円で全国1位であり、2位の佐賀県の229,768円に比べ44,938円多くなっています。令和4年度から第一種組合員の所得割保険料率が3.0%から2.6%まで引き下げられましたが、依然として保険料は全国一のままであります。保険料と保険料補填財源が共に全国一という状況を踏まえ、更なる保険料の引き下げを検討すべき段階に入ってきたのではないかと考え、医師国保問題検討委員会に「今後の保険料負担の在り方について」の諮問書を提出しました。
これを踏まえて、医師国保問題検討委員会が昨年10月26日、12月7日、本年1月18日の計3回開催され、議案書11頁にあります答申書を受領いたしました。 現行の保険料とそれを引き下げた場合の収支推計の検証を行った結果、現在の所得割保険料率2.6%でも4年後の令和10年度には、被保険者数の減少により、単年度収支で赤字となり、所得割保険料率を2.1%としますと令和7年度から単年度赤字を計上することになります。しかし、持続可能な剰余金は確保できます。以上のことから、安定的な保険給付費を確保するという観点から第一種組合員の保険料は現状維持とすること、また当組合に第一種組合員の新規加入者が非常に少ないことから、新規の第一種組合員と第二種組合員(従業員)の確保を目的として、組合員の負担軽減を図るため、世帯員(家族)及び第二種組合員の医療分保険料を世帯員「4,300円」を「2,300円」に引き下げること、第二種組合員「10,000円」を「9,000円」に引き下げることが提言されました。また、今後の諸課題への対応にあたっての要望・意見として、新規加入の第一種組合員に対し、保険料を新規開業時一定期間減額することについては引き続き検討を進めるべきであり、加えて、第一種組合員をはじめとする加入者の減少対策として、引き続き秋田県医師会との連携による取組みのほか、新規開業に携わる税理士やマネジメント会社に当組合をPRし、また、加入を検討している医師などが当組合のホームページ(HP)を閲覧するに当たり、興味を持つような内容に強化するなど、幅広い手法を用いて取り組むことが推奨されました。以上のことから、議案第1号に世帯員及び第二種組合員の医療分保険料の引き下げを上程いたします。また、当組合のHPを大胆にリニューアルするための予算措置も計上いたしましたので、ご審議の程よろしくお願い申し上げます。
医師国保組合の存続を脅かすものとして、被保険者数の減少、定率国庫補助金の削減や廃止、高額医療費が挙げられておりますが、被保険者数の減少は着実に進行してボディブローのように効いております。当組合は令和5年度末の被保険者数が1、468人で、全国で少ないほうから10番目に位置しております。全国の医師国保組合で、被保険者数が2,000人未満の組合は15ありました。また、平成27年度末と令和5年度末の9年間の被保険者数の比率では全国平均0.842に対して当組合は0.748と減少率が大きく、全国的にみると青森県、群馬県、高知県、福島県に次いで5番目となっております。減少率の高いこの5県のうち、群馬県を除くとすべて被保険者数が2,000人未満の組合です。当組合の第一種組合員の新規加入者数について、2004年度から2024年度までの21年間の推移を調査しました。その結果、調査開始時の2004年度は開業医23名、勤務医3名の計26名でしたが、その後は10名から19名で推移していました。2013年度から勤務医の加入者が増え、2017年度を除き開業医の人数を上回っております。開業医加入者数は、2019年度から2023年度までは最低の年度で1名、最高の年度で6名となっています。医師国保としては、開業医が加入してくれることで第2種組合員の獲得、延いては世帯員増につながりますので、新規開業会員の獲得が不可欠となります。組合員減少に対して、全医連の対策として、①法人化する組合員への健康保険被保険者適用除外承認制度への周知、勧奨、②地区医師会等との協力による、新規開業医師の医師会入会時までの把握、③大学等非常勤医師、大学院生、病院退職医師、フリーランス医師等への組合員資格緩和を挙げています。①については、当医師国保のしおりの2頁目に記載しておりますが、事業所が医療法人化した場合又は個人事業所で常勤従業員が5人以上となった場合、健康保険被保険者適用除外の承認を受けることにより、引き続き医師国保に加入することができます。しかし、新規開業時に一人医療法人に加入してしまいますと、その後は二度と医師国保に加入することはできません。そのため、新規開業するときはとにかく医師国保に加入し、医業が成功し収入が増えたら、その時点で改めて保険のことを再考するという道筋を作っていかなければならないと考えています。かつては医師国保の保険料は安いことがメリットでしたが、現在は協会けんぽの保険料と常に比較されます。そのためにも新規開業医の保険料を減額にする等の思い切った手段も検討しなければならないと考えております。
最後に、社会保障制度における2025年問題は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、医療や介護などの社会保障費の増大が懸念される問題でした。現行の地域医療構想は2025年を目標にして、地域の医療ニーズに医療の供給量を適合させるために、病床機能別のベッド数を過不足がないように調整した結果、何とか社会保障は破綻せず、今日を迎えることができました。次は、2040年問題と言われています。2040年は、高齢者数がピークになると言われ、医療・介護の複合ニーズを持つ85歳以上の高齢者の増加に伴い、高齢者の救急搬送は増え、在宅医療の需要も増加することが見込まれています。これに対して新地域医療構想や医師偏在対策、医療DXの推進などの改革が求められています。少子高齢化・人口減少社会の中で、医療DXを推進することは、より質の高い医療やケアを効率的に提供する体制の構築に繋がるものであるとされております。マイナ保険証に関しても、いろいろな問題があってその普及には疑問視されている面もありますが、マイナ保険証を通じて医療機関同士で共有する情報や、本人がマイナポータルで閲覧できる情報を増やしていく方針が示されています。医師国保という保険者の立場からも、今後は医療DXに積極的に参画しなければならない立場となってきております。
以上、令和7年度予算に関して医師国保問題検討委員会の答申と、第1種組合員の加入状況と加入促進方法、そして2040年問題を主体にご報告いたしました。今後とも、執行部一丸となって医師国保組合の順調な運営のために尽力して参りますので、引き続き皆様のご支援ご鞭撻をお願い申し上げて、理事長挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。